感想コメント感想コメント

  • 西岡琢也(脚本家・大阪芸術大学の映像学科教授)

    本日、「ニッポン国VS泉南石綿村」拝見しました。
    後半が、抜群に面白かったですねぇ。
    映画(注:『命てなんぼなん?泉南アスベスト禍を闘う』)のティーチインで、原さんが裁判のまどろっこしさを力説してやや挑発気味の発言を繰り返してから、俄然柚岡さんがトンガって行くところなんか、ワクワクしました(そして、結局厚労省に突入出来ない所も)。それと、あの塩崎大臣を追いかけるオバさん(注:佐藤さん)との対比は面白かった。どこまでも人が悪い。編集の鍋島惇さん(注:『ゆきゆきて、神軍』など原監督作品を担当)は意地が悪いと言ってましたが、どうしてどうして原さんも相当なものですよ。 厚労省の若い役人との21日間の攻防も、在日を巡る元ヤンチャ爺さんとのやり取りも、綺麗事ですませずそのまま作品に活かす所は、「原節」健在で嬉しくなりました。 それにしても、これだけ長期に渡って勝訴・敗訴を繰り返す裁判闘争だと、勝ち負けの一喜一憂がヤマとタニになって、作られたドラマ以上にドラマチックになるんですねぇ。そんな風に裁判闘争を考えてた事が無かったので、とても新鮮でした。
    前半は長いように思いましたが、マイケル・チミノ『ディア・ハンター』でアタマの長い長いパーティシーンから突然ベトナムの戦場に放り込まれるように(例えが適当で出ないかも知れませんが)、後半の為に、前半で数多くの被害者を描く必然はやはりあるのでしょう(あの、被害者の似顔絵の挿入は効いてます。いいアイデアですねぇ)。 死者の向こう側に、あくまでも生きる人たちの勁さを見ようとする創り手たちの気持ちに、揺さぶられました。勁さの裏にある、弱さと愚かさが愛おしくて仕方ない、立場に固執してそこから一歩も出ようとしない人たちにも単純な糾弾でない視線を感じました。それにしても、塩崎だけは死んだ目をしてましたね。 以上、思いつくままに。原一男の最新作をいの一番に見られて、良かったです。
    お招きありがとうございました。

    (2017年4月5日 大阪での関係者試写会の感想より)

  • 金平茂紀(ジャーナリスト、TBS「報道特集」キャスター)

    長さが醸し出す、わかりにくい部分をわかりにくままに提示してわからせる、という高度の技法。原告同士の間に生じる微妙な感情の行き違い、原告たちと弁護団の間に生じる葛藤と権力関係。こんなものは短時間で絶対に伝わらないものだ。時間はカットされるべきという時代のなかで、時間は積み上げられるべきだということを宣言した映画。ハラショー!!

  • 永田浩三(武蔵大学教授、元NHKプロデューサー)

    泉南アスベスト国賠償裁判に関わる、圧倒的な人間ドラマ。
    政府を相手に闘うとはどういうことかが初めてわかる。
    アスベスト被害と朝鮮半島とのつながりも目から鱗だった。
    原監督は、やっぱり原監督なのだった。