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原一男の日々是好日 ―ちょっと早目の遺言のような繰り言―

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第1回 ゲスト阪本順治監督
 第1回「阪本順治篇」無事、終了しました。いやあ、私としては実に充実した時間でした。阪本監督はこちらの質問に対して率直に答えてくれていることがビンビン伝わり、爽快でした。

 さて、“原一男ニコ生「CINEMA 塾」”と看板を掛け替えての第1回目だし、何か目新しいことはないものか?と思い、アメリカの「アクターズスタジオ」を思い出し、真似てみることを思いついた。さっそく10の質問事項をスタッフと練った。

● あなたにお聞きします。正直に答えてください。
という前振りがあって…

① 自分は、世界の中でもトップクラスの監督である、と思ってる?
② 自分の作品の中で、どの作品が、最高傑作だと思ってる?
③ 自分の作品の中で、どの作品が、失敗作だと思ってる?
④ どの作品が、最もヒットしたの?
⑤ どの作品が、最もコケたの?
⑥ あなたが、これまで殺したいと思った人、何人いますか?
⑦ 女優と付き合ったことは、ありますか?
⑧ 最近、いたしたのは、いつですか?
⑨ この世で最も、イヤなこと? 嫌いなこと? 憎むこと?
⑩ 映画監督で食えなくなったら、どんな職業を探しますか?

 どうだろう?
 この質問を番組の最初にするか、終わりの〆にするか、と議論。私は終わりの〆でいいかと考えたが、スタッフが冒頭の方がいいと主張、中身のアレコレ質問するヒントになるから、と言う。なるほど、そうかも、と同意した。 で、こちらの発想としては、番組のスタートは軽く入ったほうがいいだろう、と考えたわけだが、果たして“軽く”入れたのかどうか?
 いやあ、阪本監督は、けっこう考え込んでしまって、隣に座っている私としては、アレレ、これは軽くなかったかな?と後悔の念が起きてしまったくらい。
 あくまでも、イントロなんだし、軽いジャブのつもりなのだが…。が、彼は、根が真面目なんだろうなあ、と再認識。マジに、笑い飛ばし、はぐらかし、冗談でもかまわない、くらいの気持ちだったが、一つ一つの質問に真っ当に答えてくれたのだ。それはそれで、きっちり濃い反応ではあったが。

 この10の質問の中で最も気がかりだったのは、「⑧最近、いたしたのは、いつですか?」だ。あまりにもプライベートな内容であることは、私だって分かっていた。こんなヤバイ質問、OKかなあ、と迷ったが、スタッフは、豪快に大丈夫ですよ、と言う。もともとの私が書いていた質問は少しアプローチが違ったのだが、「原さんが聞きたいのは、結局は性のことですよね?わざわざ遠回しに聞くぐらいなら、直接聞く方が原さんらしいですし、ゲストもちゃんとそれなりに答えてくれますよ」と。
 まあ、軽いノリでいいんだから、と自分を納得させた。それに“どぎつい質問の原”が売りでもあったし、その売りを裏切ってはいけない、という“責任感”もあったし。  でも、驚くべき“生真面目さ”と言うべきか、彼は、キチンと恥ずかしがらず、逃げずに、自分のプライベートな部分を話してくれた。内容は、放送を聞いてもらうとして。
 性の部分は、人それぞれ。だが、どんな内容であれ、性の話は“不思議感”がある。

 対談が終わって、大きく私の心の中に残っているのは、彼は“実に様々なことについて考える”ということだ。それは感動するくらいに、である。彼は、現場に行く前に、台本上でカット割りを、4回くらい、やるのだそうだ。キチンと鉛筆で線を引いて。それが現場に行き、役者が動き始めると、割らなくていいんだ、と思ってしまう、という話には、笑ってしまったが。
 ともかく、トークが終わって私はすっかり、彼が気に入ってしまった。旧知の仲、のような感覚だ。また、どこかで、じっくり話し込みたいものだ、と思っている。
(2016.2.1記)
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