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THE FILMS OF KAZUO HARA
THE EMPEROR'S NAKED ARMY MARCHES ON

解説解説

87年の日本映画界を震撼させた驚愕の作品。
天皇の戦争責任に迫る過激なアナーキスト・奥崎謙三を追った
衝撃のドキュメンタリー

神戸市で妻とバッテリー商を営む奥崎謙三は、たったひとりの「神軍平等兵」として、”神軍”の旗たなびく車に乗り、今日も日本列島を疾駆する。生き残った元兵士たちの口から戦後36年目にしてはじめて、驚くべき事件の真実と戦争の実態が明かされる…。平和ニッポンを鮮やかに過激に撃ち抜いた原一男渾身の大ヒット・ドキュメンタリー。

奥崎謙三

1920年、兵庫県生まれ。第二次大戦中召集され、独立工兵隊第三十六連隊の一兵士として、激戦地ニューギニアへ派遣される。ジャングルの極限状態のなかで生き残ったのは、同部隊1300名のうちわずか100名。1956年、悪徳不動産業者を傷害致死、懲役十年の判決。1969年、一般参賀の皇居バルコニーに立つ天皇に向かい「ヤマザキ、天皇を撃て!」と戦死した友の名を叫びながら、手製ゴムパチンコでパチンコ玉4個を発射。懲役一年六ヶ月の判決。戦後初めて天皇の戦争責任を告発した直接行動として衝撃を与えたが、マスコミ等の報道や裁判審理過程においては、その主張の本質は徹底的に回避される。1972年、“天皇ポルノビラ”をまき、懲役一年二ヶ月の判決。1981年、田中角栄殺人予備罪で逮捕、不起訴。1983年、元中隊長の息子に発砲。1987年、殺人未遂等で懲役十二年の判決。(公開時資料より)

シノプシス

兵庫県神戸市兵庫区荒田町。色褪せたジャンパーを着た中年男が、シャッターを上げていた。看板にはキケンな(「キケンな」に傍点)メッセージがびっしり、大書されている。バッテリー・中古車修理店店長にして〝天皇にパチンコ玉を撃った男″奥崎謙三の登場である。
兵庫県養父町。太田垣家の婚礼、媒酌人を務める奥崎が、居並ぶ親類縁者・長老達の前で祝辞を述べる。「花婿ならびに媒酌人、共に反体制活動をした前科者であるがゆえに実現した、類稀なる結婚式でございます」 天皇誕生日当日。「神軍平等兵奥崎謙三」「田中角栄を殺すために記す」「ヤマザキ、天皇を撃て!」「捨身即救身」……奥崎の物騒な宣伝車は公安によって行く手を阻まれる。車に立てこもって演説をぶつ奥崎。 「自宅屋上に独居房を作ろう」。そう思い付いた奥崎は、その実寸を測るため、神戸拘置所に向かう。静止する職員を罵倒する奥崎。「ロボットみたいな顔しやがって!」「人間ならば腹立ててみよ!」 喪服の黒いスーツ姿に正装した奥崎は、ニューギニアで亡くなった元独立工第36連隊の戦友達の慰霊に出発する。“神軍”の旗をなびかせて疾駆する街宣車。
広島・江田島町。同年兵・島本一等兵の墓前で、島本の母・イセコをニューギニアにお連れすると約束する奥崎。
兵庫県浜坂町に、ジャングルで餓死した山崎上等兵、次いで南淡町に、毒矢で狂死した田中軍曹、と奥崎の慰霊行脚は続く。
終戦から23日後、36連隊ウェワク残留隊内で隊長・古清水による2名の部下銃殺事件が起こった。その真相究明のため奥崎は、かつての上官たちの家を次々、アポなしで襲撃してゆく。その追求の果てに〝究極の禁忌(タブー)″が日々の営みの一部となっていた戦場の狂気が、生々しく証言されることになる――。

受賞歴

  • 日本映画監督協会 新人賞
  • ベルリン国際映画祭 カリガリ映画賞
  • 毎日映画コンクール日本映画優秀賞、
    同監督賞、同録音賞
  • 報知映画賞 最優秀監督賞
  • シネマ・デュ・レエル
    (パリ・ドキュメンタリー国際映画祭)大賞
  • 日本映画ペンクラブベスト1位
  • キネマ旬報ベストテン2位(読者選出1位、読者選出監督賞)
  • ブルーリボン賞 監督賞
  • ヨコハマ映画祭ベストテン1位、同監督賞
  • おおさか映画祭 特別賞
  • くまもと映画祭 特別企画製作賞
  • 映画芸術ベストテン1位

スタッフ

監督 原一男
  • 企画 今村昌平
  • 制作 小林佐智子
  • 録音 栗林豊彦
  • 編集・構成 鍋島 惇
  • 助監督 安岡卓治、大宮浩一
  • 撮影助手 德永靖子、三好雄之進
  • 選曲 山川 繁
  • 効果 伊藤進一

監督メッセージ

奥崎謙三の映画を作ろうとした時、奥崎さん本人と、どんな映画を作ろうかとお互いに考えたことがある。私は、奥崎さんが天皇一家に向けてパチンコ玉を発射した真意と背景を探りたい、と考えていた。奥崎さんだって、人類を幸せにしない人間の作った法、ではなく神の作った法を作るべきだと主張していたから、基本は、私と奥崎さんの狙いがずれてはいなかったはずだ。観念的には。

しかし、奥崎さんが映画作りに当たって起こすアクションの具体的な内容が、奥崎さんと私では違っていた。私は、あくまでも戦争の実態に迫る何かにこだわりたい、と考えていた。だから奥崎さんと同じ部隊にいた元兵士たちを訪ねて取材をした。そして分かったのが、人肉事件のことや終戦後の処刑事件のこと。だが、奥崎さんは、戦場で起きた事件なんかに興味はなかったのだ。「戦後36年経った今、戦争時の話を映画にしても誰も興味を持ってくれませんよ」と言っていた。奥崎さんは、今、起きているトピックに対して果敢に挑んでいく神軍平等兵、というイメージを持っていたのだ。一つだけ例を挙げると、その当時、マスコミを賑わせていたのは教科書問題。奥崎さんから、こう言われた。「私、文部大臣の車に私の車をぶつけたろうと思うんです。是非、原さんにその場面を撮って頂きたい」と。他にも色々と奥崎さんは様々なアイデアを出してきた。だが、いまいちピンとこなかった私は、イエスと言わなかった。「元兵士たちを訪ねてみてください。間違いなく、何かがありますから」と説得する私に、ほとんど関心ないが、そこまで原さんがおっしゃるなら、いいですよ、と渋々OKしてくれたのだ。そんな経緯があって元兵士たちを訪ねていく、というストーリーが動き出していったわけだが、最初に尋ねた元兵士と殴り合いの事態に発展してしまった。だが収穫はあった。何かを隠しているな、と感じた奥崎さんは、俄然、強い興味を持ったのだ。そこまでは私としては良かったのだが奥崎さんは、事件の責任者である元中隊長を殺す決心をする。そこは、私の思惑を超えていた。

何が言いたいのか。奥崎さんが亡くなって10年以上経った今、あの時、私はかなり強引に奥崎さんを人肉事件、処刑事件の方に引き寄せたが、そうではなく、奥崎さんがやりたかったことをそのまま受け入れてあげれば良かったかなあ、と思うことがある。過去の出来事を、ああすれば良かったかなあ? と選択しなかった方を、悔いを抱いて思い返しても全く意味のないことは知っている。だが、頭の中では分かっていても、どうしても、あの時、奥崎さん自身がやりたかったことを、そのまま、やっていれば、今の世の中の淀んだ息苦しさに奥崎謙三は風穴を開けたのかな、と夢想してしまうのである。

原一男監督プロフィール

1945 年6月、山口県宇部市生まれ。1972 年、小林佐智子と共に疾走プロダクションを設立。同年、『さようならCP』でデビュー。74年には『極私的エロス・恋歌 1974』を発表。87年の『ゆきゆきて、神軍』が大ヒットを記録、世界的に高い評価を得る。94年に『全身小説家』、05 年には初の劇映画となる 『またの日の知華』を監督。2017年に『ニッポン国VS泉南石綿村』を発表。2019年、ニューヨーク近代美術館(MoMA)にて、全作品が特集上映された。最新作『れいわ一揆』、『水俣曼荼羅』が公開待機中。

劇場コメント

  • 戦争を知らないオレたちに、生ける亡霊が降りてきた。奥崎という名の敗戦の鬼が。

    仁藤 由美
    (名古屋シネマテーク)

  • 受け容れられることが“正しさ”だと思っている社会に、奥崎謙三の“正義”が強烈な一撃で揺さぶりをかける。

    林 未来
    (元町映画館)

  • 健忘症のわたしたちは、折に触れて『神軍』を見返す必要がある。
    過剰なる “人間” を思い出すために。

    小坂 誠
    (第七藝術劇場/シアターセブン)

  • 『ゆきゆきて、神軍』を松本で上映した『中劇シネサロン』(2004年閉館)
    のオーナ-の藤本さんは、東京の劇場に観に行き、奥崎さんの手配で妻シズミさんの命日に観客に配られた『神軍饅頭』の空箱を未だに大切に持っています。
    興行は映画人生で相当インパクトあったようです。

    宮嵜 善文
    (NPOコミュニティシネマ松本CINEMAセレクト 理事長)

劇場情報

この情報は、劇場の都合により急遽変更になる場合がございます。予めご了承ください。

この情報は2021年8月10日現在のものです。

関東

地区 劇場名 電話番号 公開
東京都 アップリンク吉祥寺 0422-66-5042 2021年8月13日~26日
神奈川県 鎌倉市川喜多映画記念館 0467-23-2500 2021年8月9日~15日
神奈川県 横浜シネマリン 045-341-3180 2020年8月15日~21日(上映終了)

北海道・東北

地区 劇場名 電話番号 公開
青森県 フォーラム八戸 0178-71-1555 2020年9月4日~9月10日(上映終了)
宮城県 フォーラム仙台 022-728-7866 2020年9月4日~9月10日(上映終了)
山形県 フォーラム山形 023-632-3220 2020年9月4日 1日限定上映(上映終了)
福島県 フォーラム福島 024-533-1717 2020年9月4日 1日限定上映(上映終了)

中部・北陸

地区 劇場名 電話番号 公開
新潟県 シネ・ウインド 025-243-5530 2020年12月8日・10日(上映終了)
長野県 松本シネマセレクト 0263-98-4928 2020年8月16日(上映終了)
愛知県 名古屋シネマテーク 052-733-3953 2020年9月21日~25日(上映終了)

関西

地区 劇場名 電話番号 公開
大阪府 第七藝術劇場 06-6302-2073 2020年8月22日~28日(上映終了)
京都府 アップリンク京都 075-600-7890 2021年9月3日~16日
兵庫県 宝塚シネ・ピピア 0797-87-3565 2021年8月20日~26日
兵庫県 元町映画館 078-366-2636 2020年8月15日~21日(上映終了)

中国・四国

地区 劇場名 電話番号 公開
山口県 山口情報芸術センター[YCAM] 083-901-2222 2020年4月18日(上映終了)
広島県 横川シネマ 082-231-1001 2020年10月15日~21日、11月1日~7日(上映終了)

九州・沖縄

地区 劇場名 電話番号 公開
沖縄 桜坂劇場 098-860-9555 2020年10月31日~11月6日(上映終了)